畳・たゝみ

暖かくなった信州は昨日の雨で北アルプスの雪が大分とけて風景が変わってきています。新鮮な気持ちになるこの季節に、清潔感を演出する畳に関してのコラムをお届けします。
 
9

 日本の住宅の特徴は靴をぬいだ生活にあり、床の清潔さであります。日本の住宅の床の中で特に畳は直接肌が触れ、寝具が敷かれる清潔な場に使われています。ですから畳は日本の住宅の象徴とも申せましょう。
さらに畳は夏の高温多湿の日本にあって湿気を吸収し、素足で歩いたりじかに座ったりする床材として、適当な弾力と感触を持ち、又断熱材としても大変すぐれた床材だといわれています。
 しかしその反面、今時どうして畳なのかと云われる方がいるのも事実です。それは日本の住宅の洋風化の流れの中で、多様な質の高い床材が開発され、あわせて室内環境を自由に調整できる時代にまでなっており、日本の住宅の内容は大いに変っているからです。

 こういう流れの中で、畳は古いもの、過去のものと思われているのも当然かもしれません。しかし畳は今日決して古いものでなく、日本人に必要なものとして現代に生き続けているのです。
たとえば最新の分譲マンションの広告を見ても、ことごとく和室が付いているというのが事実です。今日住宅が機能性を重視されている中で、かくも畳の部屋を必要としているということは、和室の持ったやすらぎだけでなく機能性にあるからでしょう。それはどんな目的にも使える畳の一部屋が、その場面に合わせて客間にも、居間にも、寝室にも自由に使える便利な部屋だからでしょう。この融通性が畳の部屋の最大の特徴であり、我々の生活に必要なのです。
又、6.0帖、4.5帖といえば、日本人はその部屋の広さから、縦横の部屋の形に至るまでは、はっきりつかめるという利点です。畳のない洋間でさえ、我々は畳を単位にして広さをつかみます。

 この様に畳はその枚数だけで我々に部屋のおおよそのイメージを与えてくれます。これは畳一枚の寸法が規格化されていて、畳の組合せによって4.5帖、6.0帖という風に日本の部屋は造られてきたからに外なりません。
諸外国で規格化が叫ばれはじめたのは、大正時代ですから古い日本の畳がいかに新しい内容を持って、今日に至るまで我々の生活に生きつづけているか知ることができます。

 

降幡廣信

 
 

【住まい再考】
信濃毎日新聞掲載の過去のコラムです。