書院造

今日、日本人の生活が多様化している如く、その住まいの儀式も、又複雑です。そこには、和風あり、洋風あり、和洋折衷ありと言う風に。さらに和風であっても[書院造]「寿寄屋造」「民家風」と言う風にです。
そこで和風の中の三つの様式について考えてみましょう。
 
書院、というのは、将軍・大名・武士・僧侶など、室町時代からの支配階級の邸宅における客殿のことです。又、「書院造」と言われる一つのスタイルが完成したのは、江戸初期だと言われています。そして「書院造」をさかのぼると、平安時代の貴族の住宅である「寝殿造」にまで至ります。
 
書院造と、寝殿造との大きな違いは、書院造には専用の出入口である玄関が出来たこと。客間ができてそこに床の間、違い棚、書院窓、爛間、長押等が取りつけられるようになったことです。これは、客間に客が迎えられて、さまざまの行事や儀式が行われるために、その家の主人の身分にふさわしい部屋飾りがなされたのです。今日、我々の生活している和風住宅は昔の書院造りの形式を受けついでいるのです。
 
その部屋の床は清潔な畳敷きであり、部屋は襖や障子で仕切られていて、庭に面して縁側があり、一番よい部屋は来客や主人の部屋です。そこには床の間等があって、格式を保ち結婚式や葬式の宴にもこと欠きません。境の襖や障子を取り払い、二間続きにすれば、大勢の集りを可能にします。部屋に座卓を持ち出せば食堂に、又家族の団らんに、布団を敷けば寝室になります。
又、夏になれば家中の障子や襖を開け放って通風を計って夏の暑さをしのぎます。冬になれば、家族が一室に閉じこもって炬燵をかこむと言う風に、場面に応じ季節に応じて家を融通自在に使えるのです。これは外国にない日本だけの特徴です。
 
それは寝殿造・書院造の時代からの、靴をぬいだ生活が大変清潔で、様式のような身を支える家具を必要としないところにあるのです。書院造りは和風住宅の母体です。
 

降幡廣信

 
 

【住まい ワンポイントシリーズ】書院造
信濃毎日新聞掲載の過去のコラムです。