こたつ(炬燵)

来週からは師走です。寒くなってきたこの時期に、特に有難みを感じるコタツに関してのコラムをお届けします。
 
住まい再考8
 

 時代が進み、生活のスタイルが洋風化してきているのに、いぜん人気があって、愛用され続けているのが、日本式の「こたつ」です。
 茶の間のない家では冬応接セットを片付けて「こたつ」を据えている家も多い程ですから。
 寒い冬、「こたつ」を囲んでの家族団らんは、日本独特のものですが、「こたつ」があってはじめて、この素晴らしい習慣が可能なのです。その理由は、「こたつ」は足を通して体の真から体の外側へと暖められていく気持ちの良さと、それにともなって心がなごむと云う様に、他の暖房器具では得られない優れたところがあるからです。

 良く考えてみると、「こたつ」は、まことに単純であって合理的です。日本人の生活の中から生れた他に類をみない経済的な暖房器具です。
 囲炉裏のように薪をもやせば、部屋の中は温まりますが煙が問題です。又、薪の焔に直接あたると、あたった側はあついくらいで、反対側はつめたいということにもなります。又、部屋全体を暖め煙を外へ捨てるストーブは、熱も同時に外に捨てることになるため燃料を多く必要とします。
「こたつ」は、まことに少量の火で体全体が気持ちよく暖まる上、灰の中にうめておけば不思議なほど火持ちがよい。そして炭によって簡単に火の補充もできるのです。
 さらに「こたつ」は場所をとらないため、三帖間とか四帖反のように充分せまい部屋にも造られ、その場が直接家族団らんの場になり、一人でごろ寝をすることもできます。又、「こたつ」のいらない季節になると、やぐらや火種を取りのぞき、こたつ畳に敷き直せば、寒い冬の部屋から暖かい季節の部屋に早変りします。

 これ程便利で省エネルギーな暖房方法は他にないでしょう。まさに日本人の発明した暖房器具の傑作と申せましょう。
今日のような「こたつ」は、江戸時代の初期にはあったと云われています。「こたつ」には、堀こたつ・すえこたつ・おきこたつが用いられています。
 この「こたつ」も、最近エネルギー源は電気に変り、座卓の裏に赤外線ランプを組み込んで、サーモスタットで温度を調節する方法に変ってきています。これも大変にエネルギーが少くてすむ「こたつ」であればこそ、庶民の暖房器機として、最も高価な電気をエネルギー源とすることができるのです。

 

降幡廣信

 
 

【住まい再考】
信濃毎日新聞掲載の過去のコラムです。