「火災と木造」

クラフトフェアまつもと2024も無事に終わりました。緑あふれる信州より過去のコラムをお届けします。
 
住まい再考5
 
 一時期、これからの建築は、金属・ガラス・プラスチック等の時代、木造の時代は終わったと考えられていました。
しかし、それらの材料にかけた期待が裏切られたため、木材が違った目で見られるようになりました。それは木材が、耐久力、安全性、居住性においても決して劣った材料ではなかったからです。

 中でも、建築材としての木材が最も危惧をもたれていた、燃えるという点について考えてみましょう。木材は燃料にも使えることから、燃え易く家事に弱いと考えられたのは無理のないことでしょう。しかし、そう単純にはすまされない内容があるということです。そこで、鉄やアルミニウム、プラスチックなど他の建築材料と比較してみることにします。鉄やアルミニウム金属等は、火事の際、炎をだして燃えることはありませんが、加熱されると低温度でも急速に強さを失い軟化してしまいます。鉄は五〇〇度で、強度は常温の半分になってしまう程です。
 ところで木材は、三五〇~四〇〇度で自然に燃え出しますが、熱で溶けたり軟化することはありません。そのうえ木材の燃え進む速度は一分間に〇.六ミリ位で、三〇分でも十八ミリ両面から燃えても三十分で三十六ミリということです。ですから、太いものや厚いものは芯まで燃えるのに大変時間がかかるのです。

 火災の後、木造住宅は他の部分は燃えつきても、骨組みが高温に耐えて倒れずに建っている場面を見かけるのもそのためです。ですから、時として太い梁や柱は火に対して鉄以上の抵抗力を発揮する場合があることに注目したいと思います。

 又、火災の際、人体に及ぼす害は、火災の熱よりは、有毒ガスが問題です。木材の良さは燃えた時、煙が少なく、しかも有毒なガスの発生が少いことです。それにひきかえ、不燃のプラスチックは多量の煙と強力な有毒ガスを発生する危険性を持っているのです。
 これからの住宅の構造、内装について考えに入れておきたい木材の一面です。

 

降幡廣信

 
 

【住まい再考】
信濃毎日新聞掲載の過去のコラムです。