新緑の季節なりました。残雪の残る北アルプスがとても美しいです。過去のコラムを紹介します。
日本の住宅の特徴の第一として上げねばならぬことは、木造ということです。これは、日本という国に木造が最も適していることから来ています。もし日本の家で石で造られたとしたら、大変なお金をかけてもなお住みにくいものになっていたでありましょう。
その原因は多々ありますが、石は、木と比較して大変に重く、地震に対して不利な点が上げられます。地震の力は建物の重量に比例するからです。重いということは、地震に対してどんなに不利か知れません。
実際に地震についての記録を調べてみると、新潟地震では木造住宅はほとんど倒れていません。関東大震災の時でも、鉄筋コンクリートの建造物は五パーセントが倒れたのに対して木造の建築物は一パーセントしか倒れなかったそうです。
その原因を探ってみますと、木材は他の建築材より軽いということから来ています。
例えば、一平方センチ当りの鉄の引張り強さは、五トンくらいですが杉は一トンくらいしかありません。事実鉄の方が強いということは確かです。しかしこれを重さ当りで比較してみますと、逆に杉は鉄よりも約四倍の引張りの強さがあることになります。
又、圧縮材料であるコンクリートについても同じように、重さ当りで比較してみますと、杉の方が五~六倍の強度があることになります。これは理想的に設計された住宅であれば、木造は鉄筋コンクリート造より四分の一から五分の一くらいの重さで済むことになるのです。同じ強度の住宅でしたら軽い木造の方が被害が少ないことになるのは当然です。
最近のメキシコ大地震を通じ、重いもので造られているが故の被害を目の当たりにして、もう一度軽い木造建築に目を向ける必要を感じます。
そして、ややもすると、木造は弱いというような、昨今の誤解をとかねばならないと思うのです。
降幡廣信
【住まい再考】
信濃毎日新聞掲載の過去のコラムです。