廊下
昔の日本の家は畳敷きの部屋が連なっていて、専用の通路である廊下はなかったのです。しかし、今日廊下は我々の生活の上で必要なものとなっている。
廊下の目的は、生活する人々の通路であって、部屋と部屋とをつなぐ役割を果たしていることです。しかしそれと同時に、廊下は部屋を引き離し、両者を隔てる役割もしているのです。こういう大事な働きをもった廊下ですから、このあつかい方いかんが家の内容を変え、家の良否をきめるポイントにもなるのです。
廊下の種類
⓵中廊下。部屋を隔てて、そしてつなぐ最も簡単な方法として好んで使われます。欠点は、両面、又それ以上の部屋に接する関係から、採光がとりにくいことと家全体の通風を悪くすることです。
⓶片廊下。片面が外部に接するため、明るい廊下になりますが、部屋をつなぎ又隔てる役目からすると、スペースの割に効率は落ちます。
⓷渡り廊下。離れと母屋をつなぐために用いられますが、一般の家庭では大変ぜいたくなものに映る時代になりました。
縁側
従来の日本の住宅では、畳敷きの部屋のまわりに板張りの部分をつけて、”縁”と呼んでいました。この”縁”と庭との間には、建具のないのが普通でした。そして、縁は庭と部屋とを結ぶ廊下のような役目と、両者を隔てる役割りをも持っていたのです。
現在は、この”縁”の先に雨戸やガラス戸を入れて、片側廊下の形をとっています。しかし、通路の機能よりはむしろ性格の違った内部と外部との緩衝地帯としての働きに重きがおかれているのです。また、縁側のうち多少巾の広いものを特に広縁と予備、籐椅子などを用いながらサンルームの目的にも使用されています。
今日も縁日は、和室に対して部屋に落ちつきと広がりを与え、又、室内気温を調整する大事な場所であることに変りありません。
特に寒暖の差の大きい信州での縁側は効果的なはずです。
降幡廣信
【住まい ワンポイントシリーズ】廊下と縁側
信濃毎日新聞掲載の過去のコラムです。